★結果発表★
[ 基礎科祭2022 DM案グランプリ ]
[ 準グランプリ 2作品 ]
各科統括賞
湘南美術学院賞
(尾竹由巳代表選出)
「心友」
子供の笑顔がとても上手に描かれており、絵が生き生きとしています。顔の表情はちょっとした筆のタッチで異なってきますので、作者の気持ちの入った観察力が十二分に生かされています。2年生になってからもしっかり精進してください。
学院長賞
(佐藤武夫学院長選出)
「遺失」
自分の考えを正直に伝達することの難しい時世に、この作品はそれを写真と文章を見事に組み合わせて表現しています。文字と画像で思考のみならず、音や空間や色彩や温度まで力強く伝えてきます。周りに惑わされず、でも迎合しつつ、自分の意志を持ったこの作品は、美術の重要な要素である「他者との精神的な共感」を生み出していると感じます。多くの作品の中で、最も長い時間、この作品と共に時間を共有しました。おめでとうございます!
油画科賞
(佐藤友則統括選出)
「お肉」
オリジナル作品(=表現)とは、単に自分の趣味・嗜好を披露するものではありません。そこには第三者(=社会)が共有できる内容を有するべきで、その意味からこの絵画を推薦しました。
まず、マーク・ロスコ(1903〜1970年 アメリカ抽象表現主義の画家)を彷彿とさせる抽象的構成が見えてきますが、「お肉」と付けられたタイトルを見た瞬間にその意味が理解できます。
「自分は分かってもらおうと描いたのではない。その場面がどのように見えたのかを示したかったのだ」このウィリアム・ターナー(1775〜1851年 イギリスロマン主義の画家)の言葉を借りれば、作者は自分が〝肉〟を見た際に感じた感覚を、シンプルながらも強いインパスト(盛り上げ)による質感や速い筆致などを用いて絵具の表情を引き出しながら、一気に描き上げたと推測できます。
ここでは、一見すると抽象絵画に見える姿も具体的な対象物を描いた結果から導かれている、との意外性が面白さを生み出しています。
又、選択されているライトレッドとゴールドとの組み合わせは、いにしえの黄金背景テンペラ(イコン画)に用いられていた配色で、その意味からは伝統的です。
日本画科賞
(速水駿統括選出)
「冬の形」
何気なく日常的にある一見、見落としてしまいがちなものに美を感じてフォーカスし、しっかりと観察していることにとても好感が持てます。作品のクオリティーもとても高く、展示のしかたも統一性があって良かったです。
彫刻科賞
(矢田遊也統括選出)
「アンバランス」
なにか思い立って実際にやってみると難しいことというのは、よくある話で彫刻をいざ作ろうとすると苦労する問題がある。人は何気に立っていることが出来るが、じっとしているのは実は難しい。じっとしている彫像のバランスをみて、自立させる、軸を考える、というのはやはり現実と地続きである彫刻ならではだ。
目的的な彫刻を考えると、忠犬ハチ公を思い浮かべる。四本の足がしっかりと地面についた渋谷のシンボルであるが、例えば忠犬ハチ公は待ち合わせ(目的・目印)なんかに使われることが多いと聞いた。もちろんハチ公自身がもっている目的もあるわけだが(ご主人の帰りを待つ等)この「アンバランス」という作品はそんないくつかの事柄をブレイクスルーしている(ブレイクダンスしている犬?)躍動感のある、ぽよんぽよんのボディライン、ねじれ、確かに自立はしているが、普通犬は尻で立たないよな〜。びっくりしている瞬間なのか。なにより良いなと思ったのは作者がバランスをとりながら純粋に造形することを楽しんでいるところだった。「無目的」であること、と彫刻が「自立」するということは実は繋がっていたりする。最近はやたらと目的はなんだと聞かれる世の中で「アンバランス」は上手くバランスをとろうとしているんではなかろうか。
犬も歩けば棒に当たる、実際いろいろやっていく中で新しい発見や、出会い、良いも悪いもが混在しているのが彫刻の醍醐味だと思います。
工芸科賞
(石井琢人統括選出)
「ツミトバツ」
第一印象で完成度の高さに目を惹かれました。
一つ一つの造作に拘りを感じ、工芸科的にはグッと来るポイントです。この作品のクオリティをもって工芸科で用いられる素材に置き換わったら、と想像しても楽しみです、是非工芸科も選択肢に入れて欲しいと願います。
題名の「ツミとバツ」と言うのも作者の真意はわかりませんが、現代への生きづらさや自身にとっての罪と罰はなんなのか、正義とは?
と言うことも考えさせられました。受賞おめでとうございます。
デザイン科賞
(大河原健太統括選出)
「私の感覚」
パッとみた瞬間、豊かな色彩が目に飛び込んできた。
花をモチーフにしているのだろうが、花の固有色にとらわれることなく、まさにタイトル通り「私の感覚」の色使いが素晴らしいと思いました。また織りの繊細さも素晴らしく、作者の熱意が伝わりました。
建築科賞
(佐藤武夫統括選出)
「雑草魂」
この作品はダンボールで作られた「たんぽぽ」です。作品自体もよく造られていますが、私が評価したのは、設置された「空間」です。芸術館のギャラリーのパーティションと壁との隙間に、ちょこんと生えているように設置されていたのです。雑草魂というタイトルと素材と設置空間が見事にマッチした作品に建築科賞を贈ります。おめでとうございます!
先端芸術表現科賞
(村上聡統括選出)
「脳汁ドバドバ オブ ザ イヤー」
当たり前の様に自身の表現したい興味、事象から優先して作られた得体の知れない塊は、作者のイメージを記録している。既存の様式には収まらず、境界を超えていく意識を強く感じました!
受験デッサン科賞
(湯浅一央統括選出)
「59期軽音の人々」
・赤い背景が印象的な画面です。
・広義の「コラージュ」だと思いますが、事物の向き(視線)やサイズ感、明度を基本にした色面配置(配色)の「非対称な釣り合い」などなど、、、無意識な中にも「心地(落ち着き)」のよい、そうでない というデザイン判断があるように感じます。そんな「構成(配置)」上のまとまり方が、結果的にこの事物のグループ全体の性格を暗に表してもいるようです。
・身近な人たちをモチーフとした表現には、(ツールを使った手軽な)「撮影記録」とは異なり、手を介した(一回性の)「記憶」として保存を可能にする特別さがあるんじゃないかと感じもしています。
美大学科賞
(嘉部隼人統括選出)
「人間の三大欲求」
この作品を観たとき、何か吸い寄せられるような感覚を覚えました。「欲求」という感情の基本は、「欠乏欲求」といって、満たされない空白を埋めようとする心の動きです。食事という日常の場面を独特な表現で描くことによって、「欲求」という感情の本質を的確に伝えている作品だなと感じます。
ジュニア科賞
(飯田安奈統括選出)
「銀河」
彼女が制作したのは、「アクションペインティング」の技法を使った作品です。授業で取り扱った表現方法で制作をしてくれました。
作品の一部でもある靴は、制作の最中に”偶然"絵の具が飛び散ってしまったそうで、もともとは作品にするつもりはなかったそうです。アクションペインティングとは、何か具体的なものを描くのではなく、”絵を描く行為”に焦点を置いた表現ですが、彼女は、そのアクションペインティングの本質をきちんと理解し、「結果でなく過程としての芸術」というローゼンバーグの言葉を体現した作品になったと思います。表現することの楽しさや喜びが感じられる良い作品です。
通信教育科賞
(遠藤惇也統括選出)
「human serial for dinosaurs」
tiktok的な圧縮された時間の中で、視覚的な欲望をギュウギュウに詰め込んだカッコいい作品。
カラフルで懐かしいポップアート的な配色と、そんなの関係ないギャルギャルしさに同時代的な表現の可能性を感じました。
現代美術を始めるならマイク・ケリーとかいいかも。泉太郎のドナルドとカーネル・サンダースの戦いは笑えるから是非見てほしい。